君が心をくれたから⑨

REVIEW

第9話 いつか見る景色のために

キャスト

逢原 雨 … 永野芽郁
朝野太陽 … 山田裕貴
望田 司 … 白洲 迅
朝野春陽 … 出口夏希
柳田達夫 … 螢雪次朗
花村竜一 … 佐藤貴史
菊野 純 … 谷 恭輔
飛岡雄星 … 萩原 護
日下   … 斎藤 工
千秋   … 松本若菜
逢原霞美 … 真飛 聖
朝野陽平 … 遠藤憲一
逢原雪乃 … 余貴美子

あらすじ

〇1ヵ月だけの妻という選択
 逢原雨(永野芽郁)は、朝野太陽(山田裕貴)からのプロポーズを受け入れ、2人きりの結婚式を挙げる。しかし、雨は用意していた婚姻届を出していなかった。あと1ヵ月で太陽の前から姿を消すと決めていた雨にとって、それは「本当の結婚」ではなく、限られた時間を共に生きるための仮初めの夫婦だったのである。雨は、太陽に重荷を背負わせないため、自分がいなくなったあとも彼が自由に生きられるよう、残酷なまでに冷静な選択をしていた。

〇母の面影と案内人の正体
 太陽は妹・春陽(出口夏希)から、亡き母・明日香の写真を渡される。そこに写っていたのは、雨のそばにいる案内人・千秋(松本若菜)だった。驚く太陽と雨に対し、案内人・日下(斎藤工)は、千秋を「母」と呼べば彼女は消えてしまうと警告する。案内人は元は人間であり、生前に縁のあった者の奇跡に関わることは許されない存在なのだと語られ、千秋が禁忌を冒して太陽の前に立っていた事実が明らかになる。

〇伝えるべき言葉、届かない時間
 司(白洲迅)は春陽に、雨が婚姻届を出していないこと、そして桜まつりの頃には視覚を失う可能性が高いことを伝える。後悔しないためにも、今のうちに気持ちを伝えるべきだと諭す司。一方、太陽は千秋に自分の人生を語り、母を救えなかった後悔や、雨に支えられて再び前を向けたことを打ち明ける。そして、もし天国で母に会えたら「ごめんなさい」と伝えてほしいと頼む。千秋はその願いを受け入れ、ある「見たい景色」を口にする。

〇案内人・日下が背負った奇跡
 五感を失う未来に恐怖を抱いた雨は日下に「死なせてほしい」と願う。日下はそれを拒みつつ、自身の過去を語り始める。1953年生まれの日下は、画家を目指す恋人・白石小夜子の命を救うため、彼女の重傷を自ら引き受ける奇跡を選択した。しかし、小夜子は後遺症なく目覚めた後、夢を選び日下の前から去っていった。誰かの未来のために自分を犠牲にした日下の人生は、雨の選択と静かに重なっていく。

〇灯りがつなぐ希望の10秒間
 千秋が見たかった景色は「家族の団らん」だった。朝野家の食卓で、姿を現した千秋は明日香として陽平(遠藤憲一)の隣に座り、家族の時間を見届ける。太陽は人生で最も大切な10秒間が何かを悟り、花火に込める想いを見つけていく。キャンドルの灯りに囲まれた雨は、太陽から「必ず五感を取り戻す」と約束され、再び希望を抱く。だが、雨の腕時計は、視覚を失うまで残り1週間を刻んでいた。

見どころ

〇母と再会できない切なさ
 写真を通して明らかになる千秋の正体は、太陽にとって救いであると同時に残酷な真実である。「母」と呼べば消えてしまう存在として、目の前にいながら決して触れられない距離感が描かれる。再会を望みながらも叶わない親子の関係は、この物語が一貫して描いてきた「与えられる奇跡には必ず代償がある」というテーマを、最も痛切な形で体現している。

〇日下の告白が示すもう一つの愛
 日下の過去は、自己犠牲によって誰かの夢を守る愛の形を浮かび上がらせる。恋人の未来を願った選択が、自分だけを孤独に置き去りにしたという事実は、雨が選ぼうとしている道の行く末を暗示するものでもある。奇跡は必ずしも幸福をもたらさないという現実を、静かに、しかし重く突きつけるエピソードである。

〇キャンドルが象徴する希望
 キャンドルの灯りは、失われゆく五感の代わりに残る心の光を象徴している。太陽が一つひとつ灯した炎は、雨に生きる理由を与え、未来を思い描く力を取り戻させた。「いつか見たい景色」を共有することで、2人は絶望の中に小さな希望を見いだす。限られた時間だからこそ輝く想いが、静かに胸を打つ見どころである。

感想

 日下の過去が明かされた。

 最初に登場した時から意味深で何かを背負っていそうな感じしかしなかった日下。彼も愛する人を救うために奇跡を受け入れた過去を持つ人間だった。日下は画家を目指していた女性・白石小夜子と出会い、恋に落ちる。しかし、彼女は20歳の時に事故で瀕死の重傷を負てしまう。命こそ助かるものの一生、動くことが出来なくなる。だが、奇跡を受け入れて身代わりになれば助けることができるという。

 奇跡って、ある人を助けるために違う人が代償を払うことだと思うが、それは色々なパターンがあるってこと?日下の時は彼女が負ったものをそのままだったけれど、太陽の場合だと等価で考えると雨の命になるのかな。でも今回は五感だった。でも、生きていても五感を失うのは死ぬ以上に辛いような気がする。五感を奪って雨の命を取らなかったことに何か理由はあるのだろうか。

 前回の話で日下が「彼はいつか花火師に戻る。人は誰もが最後は自分を守るものだから」というのは自分の過去の経験、太陽も白石小夜子と一緒だということなんだろう。たまに雨に見せる優しい笑顔は何だろうと思っていたが、誰よりも彼女の辛さがわかるからなのだろうなと納得した。

 2013年遺作となった「ごめんなさい」という題名がつけられた彼女の作品。それを見つけめる日下。穏やかで、いつもとは違う良い表情をしていた。辛くて希望などなかった日々だけど、ここにつながっていたと言って少しは報われたようだった。おそらく、最終回で描かれるのだろうが雨の場合は、どういう未来になるのだろうか。奇跡の先に希望はあると信じて最終回に期待したい。

 もう一つ明かされたのが、なぜ千秋の今は10秒間なのか?花火が咲いて散っていくまでの時間…それは太陽の父・陽平が千秋(妻の明日香)に言った言葉だった。花火師は10秒間に全身全霊を尽くしている。一生残る思い出を届けたくてと。そして陽平が人生で一番大切だった10秒間は明日香と出会った時だと太陽に語る。エンディングに向けて、この辺が何か鍵になっていきそうな感じがする。

 また、千秋が太陽にお願いした見たかった景色は「家族の団らん」だった。思い出の場所や太陽の花火なのかと思ったけれど、成長した子供2人と夫との団らんだった。千秋には見ることが叶わなかったから景色だからだろう。この後、陽平と千秋を2人にすべく、太陽は春陽を誘ってコンビニに行くが、気配を感じたのか、陽平が妻への感謝を述べるシーンはとても泣けた。この他にも日下が美術館で遺作を見るシーン、さらに太陽が千秋のこれまでの人生を語るシーンは見どころだった。

 火事があった時に降った雨に関して太陽と朝野煙火工業を守るために降らしてくれたと妻に感謝しているけれど、以前に日下が言った「人は死んだらほんのわずかな時間だけ雨を降らすことができ、雨に心を込めて、大切な人に思いを届ける」というのにつながっていて、以外にといったら失礼だけど、考えられて作れれているのだなと思った。ただ、毎回、誰かが涙を流して暗いドラマではなかった。