もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう⑩

REVIEW

第10話 さらば八分坂

キャスト

久部三成 … 菅田将暉
倖田リカ … 二階堂ふみ
蓬莱省吾 … 神木隆之介
江頭樹里 … 浜辺美波
風呂須太郎 … 小林薫
トニー安藤 … 市原隼人
大瀬六郎 … 戸塚純貴
パトラ鈴木 … アンミカ
毛脛モネ … 秋元才加
朝雄 … 佐藤大空
おばば … 菊地凛子
江頭論平 … 坂東彌十郎
うる爺 … 井上順
伴工作 … 野間口徹
ジェシー才賀 … シルビア・グラブ
乱士郎 … 佳久創
浅野大門 … 野添義弘
浅野フレ … 長野里美
トンちゃん … 富田望生
黒崎 … 小澤雄太
彗星フォルモン … 西村瑞樹(バイきんぐ)
王子はるお … 大水洋介(ラバーガール)
仮歯 … ひょうろく
毛利里奈 … 福井夏
ケントちゃん … 松田慎也
いざなぎダンカン … 小池栄子

あらすじ

○ノイズこそが演劇だ
 トニー(市原隼人)不在の公演を乗り切った夜、久部(菅田将暉)は憧れの蜷川幸雄(小栗旬)と対面する。蜷川は、元ストリップ小屋での上演や予測不能な展開を「ノイズ」と称賛し、久部の芝居に可能性を見出す。予定調和を壊す力こそ演劇だという言葉に、久部は強く背中を押される。

劇場を守る取引
 トニーが残した証拠音声を使い、久部と大門(野添義弘)はオーナー・ジェシー(シルビア・グラブ)と交渉。不当な上納金は撤廃され、劇団は低額で劇場を使えることに。トニーの犠牲の上に得た自由は、久部にとって責任と野心を加速させる契機となる。

舞台上のノイズ
 おばば(菊地凛子)は久部に「やがて小屋主になる」と予言。リカ(二階堂ふみ)はその言葉に現実的な野心を重ね、大門を排除する可能性を囁く。理想と打算が交錯する中、久部の表情は次第に変わり、純粋だった情熱に影が差し始める。

舞台上のノイズ
 代役の蓬莱(神木隆之介)が大失敗する一方、出番外の大瀬(戸塚純貴)が乱入し、舞台は大混乱。しかし観客は熱狂し、久部はこれをノイズの成功として肯定する。是尾(浅野和之)との価値観の溝が決定的になり、久部の演出家としての危うさも際立つ。

○楽屋はどこにある
 横領疑惑をきっかけに大門夫妻を切り捨てた久部。去り際に大門が放つ「じゃあ楽屋はどこだ」という言葉は、久部の在り方を鋭く突き刺す。世界を舞台と信じた男は、休める場所を失っていく。

見どころ

蜷川幸雄の存在感
 蜷川の語る「猥雑さ」「ノイズ」という演劇論は、作品全体の思想を言語化する名シーン。久部の成功体験であると同時に、後の暴走を予感させる両義性があり、カリスマの言葉の怖さがにじむ。

○久部とリカの共犯関係
 大門排除に向かう久部と、それを巧みに導くリカの関係性が一気に前景化する回。支え合う恋人から、欲望を共有する“運命共同体”へと変質する瞬間が静かに描かれる。

「楽屋」という問い
 大門の一言によって浮かび上がる本作の核心。「この世が舞台なら、休める場所はあるのか」。成功と引き換えに孤独を深める久部の姿が、タイトルの意味を痛烈に回収する見事なラストとなっている。

感想

 久部が理想の演出家から小屋主としての権力者へと変わっていく回だった。

 敬愛する蜷川幸雄から「ノイズがある」と認められたことで舞い上がる姿は未熟すぎて痛々しい。そしてノイズを大義名分に周囲の声を切り捨てていく様は暴走の予感を感じさせる。

 ジェシーとの交渉に成功し、劇団は一気に安定へ向かう。だが一方では、大門夫妻を切り捨て、蓬莱や樹里へ不遜な態度が、久部が理想の演出家から小屋主としての権力者へ変貌しつつある。

 しかし、大瀬の舞台乱入ではノイズとして称賛する様を見る限り、久部の姿は、演劇への愛がまだ失われていないようだ。純粋さと傲慢さが同居している状態か。

 最後、大門の「楽屋はどこだ?」という問いかけはこのドラマの核心をついている。楽屋という休める場所をなくした久部の悲劇が始まっているような気がする。

 そして、おばばの予言である蓬莱は最終回でキーマンになりそうだ。