ヤンドク!⑥

REVIEW

第6話 ツッパリ時代のライバル登場!新人看護師の葛藤

キャスト

田上湖音波 … 橋本環奈
中田啓介 … 向井理
鈴木颯良 … 宮世琉弥
大友真一 … 音尾琢真
高野ひかり … 馬場徹
松本佳世 … 薄幸(納言)
ソン・リーハン … 許豊凡(INI)
城島麗奈 … 内田理央
鷹山勲 … 大谷亮平
大河原嗣子 … 大塚寧々
田上潮五郎 … 吉田鋼太郎

あらすじ

消えゆく記憶と宿命の再会
 田上湖音波(橋本環奈)は、脳血管腫により記憶障害が進行する北岡孝典(杉本哲太)を担当する。転院当日、孝典は姿を消し騒ぎとなるが、病院食堂で潮五郎(吉田鋼太郎)と遭遇。実は2人は高校時代からの宿命のライバルであった。しかし孝典は五郎を覚えていない。手術で命は助かる可能性が高いが、海馬近くの腫瘍のため記憶を失う危険があるという厳しい現実が突きつけられる。忘却と命、どちらを選ぶのかという重いテーマが提示される。

亡き息子の面影と颯良の過去
 孝典は看護師・鈴木颯良(宮世琉弥)を亡き息子・昌也と誤認する。昌也は10年前に事故死していた。妻・真理子(櫻井淳子)は、夫が息子への思いを胸に秘めてきたと語る。五郎は颯良に昌也のふりを頼むが、颯良は強く拒絶。その背景には、高校時代に脳腫瘍で亡くした恋人・深沢優菜(森下乃亜)への後悔があった。「必ず治る」と言った嘘が心の傷となり、颯良は患者に偽りを重ねることができなかったのである。

“必要な嘘”という選択
 手術を前に、湖音波は真理子の思いを受け、颯良に再び頼み込む。孝典と家族が前を向くための時間だと説得され、颯良は覚悟を決める。外出許可のもと、孝典、真理子、昌也になりすました颯良は食事とキャッチボールを楽しむ。失われゆく記憶のなかで、家族の時間が静かに刻まれる。一方で、嘘が露見する危険も孕んだ不安定な幸福であり、観る者に倫理的な問いを投げかける展開である。

一瞬の回復と崩壊
 五郎はどて煮の恩人である孝典に感謝を伝えるため、不良姿で再現劇を仕掛ける。刺激を受けた孝典は一瞬、記憶を取り戻すが、昌也の死も思い出し激昂。「だましたのか」と叫び倒れてしまう。緊急手術が行われ、湖音波は記憶喪失の可能性を真理子に説明。真理子は、この日の思い出を支えに生きていくと語る。命と記憶の代償を真正面から描いたクライマックスである。

匂いがつなぐ記憶と新たな不穏
 術後、記憶を失った孝典に五郎はどて煮を差し出す。味と匂いに反応し「俺の言うた通りやろ」と一瞬だけ昔の表情を見せる。言葉を超えた記憶の残滓が胸を打つ。一方、湖音波は颯良に優菜の最期の映像を渡し、彼女が前向きだった事実を伝える。さらに中田啓介(向井理)に感謝を告げる湖音波だが、その裏で事務局長・鷹山勲(大谷亮平)が中田の娘を匂わせる連絡を入れる。不穏な影が再び動き出す。

見どころ

“記憶”を巡る究極の選択
 命を救う代わりに記憶を失うという究極のテーマを扱う。記憶とは何か、人格とは何かという問いが、孝典と家族の姿を通して丁寧に描かれる。五郎の焦り、真理子の覚悟、湖音波の葛藤が交錯し、医療ドラマでありながら哲学的な深みを帯びた回である。

颯良の過去と再生
 これまで明るく振る舞ってきた颯良の過去が明かされる点も大きな見どころである。優菜への後悔が、患者への誠実さにつながっていたことが判明し、人物像が一気に立体化する。最後に映像を通して救われる颯良の涙は、屈指の感動場面である。

五郎と孝典の男の友情
 不良スタイルでの再現劇から、どて煮を介した記憶の呼び戻しまで、五郎と孝典の関係は本話の情緒的核である。強がりながらも友情を大切にする五郎の姿は温かく、親世代のドラマとしても見応えがある。笑いと涙を両立させた巧みな演出が光る。

感想

 記憶。目に見えないその重さを真正面から扱ったのが第6話。命と引き換えに記憶を失うかもしれないという、医療現場の残酷なリアリティが凄かった。

 真理子の覚悟は静かで力強く、夫が自分を忘れても支えていくという決意に胸を打たれた。真理子を演じた櫻井淳子の熱演も良かった。

 また、颯良の過去が掘り下げられた。嘘をつけない理由が明かされ、最後に優菜の映像で救われる流れは美しくもあり感動的だった。

 潮五郎と孝典の不器用な友情も味わい深く、どて煮の匂いが引き金となり、一瞬の記憶が戻る場面も颯良のシーン同様にせつなくも温かいシーンだった。

一方で、中田を巡る不穏な展開が再び動き出し、一気にサスペンスに引き戻される。緩急のつけた構成が巧みだった。家族、友情、後悔、そして再生。全部の要素が1時間に凝縮されていた。