もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう⑨

REVIEW

第9話 トニーはまだか

キャスト

久部三成 … 菅田将暉
倖田リカ … 二階堂ふみ
蓬莱省吾 … 神木隆之介
江頭樹里 … 浜辺美波
風呂須太郎 … 小林薫
トニー安藤 … 市原隼人
大瀬六郎 … 戸塚純貴
パトラ鈴木 … アンミカ
毛脛モネ … 秋元才加
朝雄 … 佐藤大空
おばば … 菊地凛子
江頭論平 … 坂東彌十郎
うる爺 … 井上順
伴工作 … 野間口徹
ジェシー才賀 … シルビア・グラブ
乱士郎 … 佳久創
浅野大門 … 野添義弘
浅野フレ … 長野里美
トンちゃん … 富田望生
黒崎 … 小澤雄太
彗星フォルモン … 西村瑞樹(バイきんぐ)
王子はるお … 大水洋介(ラバーガール)
仮歯 … ひょうろく
毛利里奈 … 福井夏
ケントちゃん … 松田慎也
いざなぎダンカン … 小池栄子

あらすじ

○夢の共有と危うい幸福
 トロ(生田斗真)を退けた久部(菅田将暉)は、客席でリカ(二階堂ふみ)と静かな時間を過ごす。「ハムレット」を上演し、自ら主演し、オフィーリアをリカに…。演劇と未来を語る久部に、リカは小さな口づけで応える。束の間の幸福が、嵐の前触れのように描かれる。

役者を差し出す取引
 ジェシー(シルビア・グラブ)は支払い免除を餌に、トニー(市原隼人)を危険な取引へ貸せと迫る。現場の反対を押し切り、久部は苦渋の決断を下すが、トニーは舞台を第一に考える真摯な役者だった。その姿勢が久部の胸を強く打つ。

幕を開ける覚悟
 トニー不在のまま開幕。久部は観客の存在に涙し、公演続行を決意する。蓬莱(神木隆之介)と樹里(浜辺美波)の機転で、おばば(菊地凛子)の時の復活、里奈(福井夏)のダンス、是尾の間を引き延ばす。舞台と裏方の総力戦が始まった。

即興が救った舞台
 フォルモン(西村瑞樹)とパトラ(アンミカ)の即席漫才、大瀬(戸塚純貴)のアドリブ、論平(坂東彌十郎)の乱入まで飛び出し、舞台は混沌と熱狂に包まれる。ぎりぎりの瞬間、トニーが帰還し、渾身の芝居で物語を本筋へと引き戻す。

○芝居で守る、そして別れ
 ようやく戻ったトニーは舞台を立て直すが、取引現場には警察の影。自首を選ぶトニーは証拠のテープを久部に託し、劇団を守るため一芝居打つ。怒涛の夜の終わり、久部の前に現れたのは、敬愛する演出家・蜷川幸雄(小栗旬)だった。

見どころ

即興が生む奇跡
 台本を超えた即興の連続で公演を成立させる展開は、本作屈指の熱量。失敗も混乱も含めて“舞台は生き物”だと体感させ、観る者に演劇の魔法を突きつける名場面が続く。

○トニーという役者の覚悟
 危険な仕事より舞台を選び、観客への誠実さを貫くトニーの姿は、名優たちとは別の意味で胸を打つ。久部が信じてきた「才能」とは異なる、地に足のついた役者像が際立つ回。

蜷川幸雄の登場
 ラストで姿を現す蜷川幸雄は、久部の夢の原点そのもの。ここまで積み重ねられてきた苦闘を、一段上の視座から照らす存在として、物語を最終章へ押し出す強烈な引きとなっている。

感想

 幕を開ける覚悟を問われた回だった。トニーが戻らないかもしれないという状態の中、公演を観に来る人たちの笑顔を前に幕を開けると決めた久部の涙は覚悟と責任感がみえ見方によっては美しい。

 ただ、違う見方をすれば、ジェシーの取引を選択したせいでもあるし、さらに理想ばかりを語り幕を開ける決断をし、窮地に陥る久部の姿は痛々しい。

 公演の危機を救ったのは久部を含めた劇団全員の力だった。おばばの復活や是尾のたっぷりとした間、フォルモンとパトラの即興漫才、大瀬のアドリブ、混乱さえも物語に変えてしまう。舞台という魔力を垣間見た気がした。

 一方でトニーの舞台への合流からのは自首という決断はせつなかった。劇団を守るために一芝居打つ姿は、役者としての誠実さが見えた。久部が「いい芝居するなあ」と呟いた瞬間には見ていて思わずうなずいてしまった。演技なのか日常なのか境界線があいまい、いや交わった瞬間だったのかもしれない。

 このドラマの核心ともいえる回だったように思える。