LOVED ONE⑧

REVIEW

第8話 炎に消えた母娘

キャスト

水沢真澄 … ディーン・フジオカ
桐生麻帆 … 瀧内公美
本田雅人 … 八木勇征
高森蓮介 … 綱啓永
松原涼音 … 安斉星来
吉本由季子 … 川床明日香
篠塚拓実 … 草川拓弥
井川 薫 … 上川拓郎
山崎慎也 … 小松和重
堂島穂乃果 … 山口紗弥加

あらすじ

○焼け跡から消えた少女
 法医学者・水沢真澄(ディーン・フジオカ)とMEJセンター長・桐生麻帆(瀧内公美)は、放火によって全焼した住宅の鑑定に向かう。焼け跡からは炭化した遺骨と結婚指輪が見つかり、住人の佐多春香(菅野莉央)が5歳の娘・夏海(西原紬)を助けようとして焼死したとみられていた。しかし歯型照合で身元は春香と判明した一方、夏海の遺骨だけはどれほど探しても見つからない。近隣住民も消防隊も、夏海が脱出した姿を目撃しておらず、少女は炎の中から忽然と姿を消していた。燃え尽きた家と残された遺骨は一見すると単純な母子の悲劇を示しているように見えたが、真澄は遺骨の配置や指輪の存在に違和感を抱き、この火災には誰かが意図的に作り上げた「物語」が隠されていると考え始める。

親友が隠し続けた真実
 真澄たちは、春香の親友で火災の第一通報者でもある棚原梢(蓮佛美沙子)から事情を聞く。梢は春香とは幼少期からバドミントンを続けた親友であり、火災当日も一緒に外出していたと証言する。帰宅すると家はすでに燃えており、窓際で助けを求める夏海を見つけた春香が迷わず炎の中へ飛び込んだという説明は、目撃証言とも一致していた。しかし堂島穂乃果(山口紗弥加)は、幼い子どもを家に残していた点や、親友を亡くしたにしては梢が落ち着きすぎている様子に疑問を抱く。さらに部下の井川薫(上川拓郎)の張り込みによって、梢と春香の夫・康行(森岡龍)が密かに接触していたことも判明する。不倫を疑わせる状況まで浮上し、事件は単なる放火ではなく、人間関係が複雑に絡み合う様相を見せ始める。

DNAが覆した母娘の常識
 MEJで詳細な鑑定を進めた結果、遺骨と夏海のDNAを照合すると、生物学的な親子関係が成立しないという衝撃の結果が判明する。この事実を受け、真澄は事件全体を改めて組み立て直す。決め手となったのは、梢の部屋に飾られていた春香の写真だった。写真では春香は結婚指輪を身につけていなかったにもかかわらず、焼け跡の遺骨には指輪が残されていたのである。違和感を積み重ねた真澄は、遺骨は春香ではなく別人であり、歯科カルテそのものが改ざんされている可能性へたどり着く。梢が歯科クリニックを経営している事実も結び付き、法医学と歯科資料を悪用した大胆な身元偽装という前例の少ないトリックが少しずつ姿を現していく。

○DVから娘を守るための偽装工作
 真澄は梢に対し、遺骨の正体は同級生・立野実和(福田沙紀)であり、歯科カルテを入れ替えて身元を偽装したと指摘する。さらに事件当日、春香は長年DVを受けており、梢とともに夏海を連れて逃げる計画を立てていたことも明らかになる。帰宅した家では、すでに康行に殺害された実和が倒れていた。梢はその遺体を利用すれば春香を死んだことにできると考え、二人は夏海を避難させたうえで実和の遺体に結婚指輪をはめ、灯油をまいて放火した。そして春香は人目のある前で家へ飛び込み、裏口から脱出して夏海と合流する。違法行為であることを承知しながらも、母娘を暴力から救うために選んだ苦渋の決断だったことが明らかになる。

○守りたかった愛する人
 穂乃果は康行を追及し、実和との不倫関係や殺害の経緯を暴く。実和は関係を公表すると迫り、追い詰められた康行は彼女を殴り殺害していた。その後、遺体処理のために道具を購入していた防犯カメラ映像や、遺骨に残る頭蓋骨陥没痕が決定的証拠となり、康行は逃げ場を失う。一方、梢は自分たちが逮捕されれば夏海が再び父親のもとへ戻されるのではないかと涙ながらに訴えるが、穂乃果は「警察は誰かの大切な人を守るためにいる」と約束する。事件解決後、真澄は鑑定を最後まで諦めなかったMEJの仲間を労い、麻帆は「LOVED ONE」という言葉の意味を理解できた気がすると語る。大切な人を守ろうとする思いが、作品全体のテーマとして静かに浮かび上がる締めくくりとなった。

見どころ

○遺骨が暴いた身元偽装トリック
 最大の見どころは、法医学と歯科鑑定を組み合わせた身元偽装である。歯型照合という絶対的な証拠に見えるものが、歯科カルテの改ざんによって覆される展開は意外性に富んでいる。さらに結婚指輪の違和感やDNA鑑定が少しずつ矛盾を積み重ね、真実へ到達する構成は非常に緻密である。派手な演出に頼るのではなく、わずかな証拠を積み重ねて真相へ近づく法医学ミステリーとしての魅力が存分に発揮された回だった。

○穂乃果が語る刑事としての信念
 穂乃果の人物像が深く掘り下げられた点も印象深い。殉職した先輩刑事・高坂剛(古田新太)との思い出が語られ、「誰かの大切な人を守るために警察は存在する」という教えが現在の穂乃果の信念になっていることが描かれる。その言葉を終盤で梢へ伝える場面は、事件解決だけでは終わらない温かさを作品にもたらした。法医学だけでなく、人を守る使命を持つ刑事の視点が強く印象に残るエピソードである。

○「LOVED ONE」というタイトルの意味
 シリーズタイトルである「LOVED ONE」が物語の中で明確な意味を持ち始める。DVから娘を守ろうとした春香、親友を助けようとした梢、そして被害者や遺族を守ろうとする穂乃果やMEJ。それぞれが「愛する人」を守るために行動していたことが描かれる。一方で、その思いが法を越えてしまえば罪にもなるという現実も同時に提示され、単純な善悪では割り切れない余韻を残した。作品全体のテーマを象徴する重要な一話であった。

感想

 タイトルの核心でもある守るというテーマを真正面からとらえた回だった。放火に身元偽装とい犯罪が絡む事件だったが、その動機となった背景を考えると一概には責められない。

 娘を守るために夫からDVを受けていた春香の毎日を考えると心が痛む。梢以外にも相談できるできる人や場所はなかったのだろうか。限界まで追い詰められた末の行動なのだろうが、娘・夏海のことを考えるとなんともやるせない。

 今回、穂乃果の過去が明かされたのは印象的だった。高坂から受け継いだ「誰かの大切な人を守る」という信念。これまでの彼女の捜査姿勢がここにきて回収された。殉職した先輩刑事・高坂の墓の前で見せる彼女はいい笑顔をしていた。

 法医学部分では遺骨やDNA、歯科カルテといった客観的証拠から事件の真相にたどり着く展開は、このドラマならではで見ごたえがあった。

 ラストで麻帆が語った「LOVED ONE」の意味の場面はこのドラマのテーマ性を改めて実感させられ心に残るラストシーンだった。