サバ缶、宇宙へ行く⑧

REVIEW

第8話 先生、候補に選ばれるも厳しさに戸惑う

キャスト

朝野峻一 … 北村匠海
寺尾瑠香 … 伊東蒼★
小松崎菜那歌 … 平澤宏々路★
竹田大檎 … 安藤冶真☆
三好勝哉 … 染谷隼生☆
竹田奏仁 … 木村舷碁★
川上寿々 … 石田莉子★
宮井恵 … 早瀬憩
早川樹生 … 中川翼
桑田実桜 … 足川結珠
菅原奈未 … 出口夏希
寺尾創亮 … 黒崎煌代
木村流空 … 山下永玖
菊池遥香 … 西本まりん
福原凪沙… 夏目透羽
佐々木柚希 … ゆめぽて
寺尾瑠夏 … 吉本実由
田所明正 … 八嶋智人
浜中道夫 … 三宅弘城
浜中和子 … 村川絵梨
百瀬弦 … 佐戸井けん太
檜山香織 … 熊切あさ美
皆川有紀 … ソニン
寺尾茂信… 迫田孝也
東口亮治 … 鈴木浩介
黒瀬正樹 … 荒川良々   
木島真 … 神木隆之介

★は在校生、4期生、☆は普通科生徒

あらすじ

○候補入りの重み
 若狭小浜高校海洋科学科の宇宙サバ缶が宇宙日本食候補となり、その取り組みはテレビでも紹介される。教師・朝野峻一(北村匠海)や菅原奈未(出口夏希)、寺尾瑠夏(伊東蒼)たちは町中から祝福を受け、長年続いた挑戦がようやく実を結び始めたことを実感する。一方で、教育委員会から朝野には現場を離れ教育委員会へ異動しないかという打診が届く。周囲が成果を喜ぶなか、朝野だけは教師としての進路に迷いを抱えることとなる。さらにJAXAから木島真(神木隆之介)と皆川有紀(ソニン)が学校を訪れ、「候補」と「認証」はまったく異なる段階だと説明する。夢が現実へ近づいたように見えても、本当の勝負はここから始まることを、生徒たちは改めて思い知らされるのである。る。夢に敗れた経験を抱えながらも、新たな立場で再出発する奈未の姿が本話の軸となる。

妥協しない実験
 木島は試作品を口にすると、無重力環境では汁が飛び散る危険が残っており、粘度が基準に届いていないと指摘する。しかし瑠夏は、粘度を高めれば味が損なわれるため、おいしくない宇宙食を届ける意味はないと譲らない。その姿に木島は、かつて宮井恵(早瀬憩)から同じ言葉を聞いたことを思い返し、「味も安全性も両立させてほしい」と課題を託す。瑠夏と竹田奏仁(木村舷碁)は試行錯誤を繰り返すが、小松崎菜那歌(平澤宏々路)と川上寿々(石田莉子)は地道な実験についていけなくなる。華やかな話題の裏側には、終わりの見えない失敗の積み重ねがあることが描かれ、研究とは忍耐の連続であることを実感させる展開となる。

○受け継がれる思い
 実習を辞めようと考えた菜那歌と寿々は、寺尾創亮(黒崎煌代)に連れられて熊川宿を訪れ、宇宙サバ缶二期生・早川樹生(中川翼)からくず粉について教わる。樹生は技術だけでなく、歴代の先輩たちが宇宙を目指して挑み続けた思いも語る。さらに佐々木柚希(ゆめぽて)は、夢を実現するまでの日々は地味な努力の繰り返しであり、それを積み重ねる覚悟こそ必要だと諭す。二人は初めて、自分たちが取り組んでいた実習が十年以上にわたり受け継がれてきた挑戦であることを理解する。単なる課題ではなく、人から人へ受け継がれる志だったと知ったことで、二人の意識は大きく変化していくのである。

○仲間を理解する力
 普通科への編入を望むよう勧める兄・大檎(安藤冶真)の思いに揺れる奏仁は、普通科の生徒・三好勝哉(染谷隼生)から宇宙サバ缶を侮辱され、思わず感情を爆発させてしまう。騒動の場へ菜那歌と寿々が駆けつけ、三好が先に暴力を振るった事実を証言したことで、奏仁の潔白は明らかになる。その後、朝野は普通科の生徒たちにも海洋科学科の実習を公開する機会を設ける。黒ノートに刻まれた歴代生徒の歩みや、仲間と夢へ向かう奏仁の姿を目の当たりにした大檎は、自分が弟の可能性を狭めていたことを悟る。そして「宇宙へ飛ばせるとええな」と奏仁の夢を応援し、自らの考えを改めるのであった。

○認証への長い道
 創亮の助言を受け、瑠夏たちは地元名産の熊川のくず粉を取り入れた試作品を完成させる。木島は再び小浜を訪れ、そのサバ缶を試食。味と粘度の両立を高く評価し、認証審査へ進める品質に達したことを認める。喜びに包まれる朝野や奈未、生徒たちだったが、木島は認証までには最低でも一年半の検査期間が必要だと説明する。その期間では瑠夏たちが卒業してしまう可能性が高い。長年追い続けてきた夢が目前まで迫りながら、自分たちの在学中には完成を見届けられないかもしれない現実が突きつけられる。それでも夢は世代を超えて受け継がれていくという、本作らしい希望を感じさせる締めくくりとなった。

見どころ

○「候補」と「認証」の大きな違い
 宇宙日本食候補になったことで物語が終わるのではなく、むしろここから本当の挑戦が始まる構成が印象深い。木島は安易に期待を持たせることなく、宇宙食開発では安全性と再現性が絶対条件であることを改めて伝える。一方で、味へのこだわりを否定せず、生徒たちの信念を尊重する姿勢も見せた。厳しさと理解を兼ね備えた木島の存在が、宇宙開発の現実と夢の両方を支えていることが伝わる重要な場面である。

○歴代卒業生がつないだバトン
 創亮や樹生、柚希ら歴代メンバーが自然な形で現役生を支える展開が胸を打つ。彼らは完成した成果ではなく、途中で終わった夢を後輩へ託して卒業していった世代である。その思いを知った菜那歌と寿々が、自分たちの軽率さを反省し、本気で実習へ向き合うようになる流れは非常に丁寧だった。宇宙サバ缶は一人の成果ではなく、何世代もの挑戦が積み重なって形になっていることが改めて伝わる回である。

○時間という最後の壁
 試作品が完成し、木島から高い評価を得る場面は大きな達成感に満ちている。しかし、その直後に認証まで一年半以上かかるという現実が示されることで、一気に物語は切なさを帯びる。努力だけでは乗り越えられない「時間」という壁は、この作品が繰り返し描いてきたテーマでもある。夢は簡単には実現しない。それでも世代を超えて受け継がれるからこそ意味があるという本作のメッセージが、静かに胸へ響くラストであった。

感想

 夢が形になり始めたからこそ見えてくる現実の厳しさを真正面から描いていたが、それがリアルだった。宇宙日本食の候補に選ばれたが、正式認証までには高い壁があると描いた脚本ははなかなか硬派な感じだ。

 菜那歌と寿々の心理描写の変化も良かった。テレビ取材や注目だけにと華やかな部分に目を向けていた二人だったが、、歴代の先輩たちの挑戦を知り地味な努力の繰り返しを理解していく。また黒ノートがバトンとして機能していることを改めて感じさせられる。

 また、竹田兄弟のストーリーも心に残った。弟・奏仁が仲間と真剣に打ち込む姿を見て素直に夢を応援し、自らの考えを改める。弟思いの素敵な兄じゃないか。

 終盤、サバ缶がようやく認証クオリティに達した喜びの直後に、「認証まで1年半かかる」という時間の壁が立ちはだかる。緩急つけた構成がなかなか憎い。果たして卒業まで間に合うのか。期待が高まる。