LOVED ONE⑥

REVIEW

第6話 刺し傷のある首吊り遺体

キャスト

水沢真澄 … ディーン・フジオカ
桐生麻帆 … 瀧内公美
本田雅人 … 八木勇征
高森蓮介 … 綱啓永
松原涼音 … 安斉星来
吉本由季子 … 川床明日香
篠塚拓実 … 草川拓弥
井川 薫 … 上川拓郎
山崎慎也 … 小松和重
堂島穂乃果 … 山口紗弥加

あらすじ

○家族が容疑の渦中に入った日
 法医学者・松原涼音(安斉星来)は、検査技師・吉本由季子(川床明日香)と食事を楽しんでいた最中、姉の松原早紀(志田彩良)が国会議員・青田敏夫(東根作寿英)との不倫を報じられたことを知る。その直後、青田が議員事務所で首を吊った状態で発見される。第一発見者は早紀だった。法医学者・水沢真澄(ディーン・フジオカ)とMEJセンター長・桐生麻帆(瀧内公美)が現場を調査し、解剖の結果、青田は死亡後に吊るされた可能性が高いことが判明する。さらに胸部には不可解な刺し傷が4カ所残されていた。姉が事件の中心人物となったことで、涼音は調査への参加を申し出る。家族への感情と法医学者としての責任が交錯するなか、事件は単なる不倫スキャンダルでは終わらない様相を見せ始める。

空気を読む姉の苦しい沈黙
 取調べを受けた早紀は、青田との不倫関係を認めたうえで、自分が口論の末に青田を階段から突き落としたと供述する。しかし、その証言を裏付ける痕跡は一切見つからなかった。真澄は、早紀の証言が真実を隠すためのものではないかと考える。涼音もまた、姉は他人の顔色ばかりを気にする人物だが、故意に人を傷つける人間ではないと信じていた。一方、麻帆は厚労省から調査への介入を制限されながらも、青田が進めていた医療制度改革法案の資料を収集する。やがて調査は不倫問題から政治の世界へと広がり、青田が抱えていた大きな秘密の存在が浮かび上がる。早紀の嘘は罪を隠すためではなく、誰かの思いを守るためのものだったのである。

香辛料が結び付けた転落現場
 解剖や成分分析を進めるなかで、涼音は遺体の付着物からアンフェティダという香辛料の成分を発見する。それは以前訪れたホテルのエスニック料理ビュッフェで使われていた特殊な香辛料だった。現地を調査した涼音は、ホテルの外階段に青田が転落した痕跡を見つけ出す。一方、真澄は議員事務所でボールペンの部品に注目していた。転落事故の可能性は高まったものの、胸に残された複数の刺し傷との関連は不明のままだった。別々に見えた証拠が少しずつつながり始め、青田が死亡するまでの経緯が輪郭を帯びていく。涼音は姉のためだけでなく、一人の法医学者として事件の核心へ踏み込んでいくのである

○胸に刻まれた救命の痕跡
 真澄は、青田が転落によって肋骨を骨折し、緊張性気胸を発症したという仮説を提示する。胸の刺し傷は殺意によるものではなく、誰かがボールペンで胸に穴を開けて救命処置を試みた痕跡だった。真相を語り始めた青田の妻・青田楓(西山繭子)は、15年前に青田が自分の母親を同じ方法で救った過去を明かす。事件当日、楓は倒れた青田を救おうと必死に処置を施したが、命をつなぎ止めることはできなかった。刺し傷は愛する人を助けたいという願いの証だったのである。法医学によって暴かれたのは犯罪の痕跡だけではなく、死の直前まで続いていた夫婦の絆でもあった

○消せなかった改革への意志
 やがて事件の全貌が明らかになる。青田は医療グループ泉州会と大物政治家・筧新之助(嶋田久作)の贈収賄を追及していた。早紀はその証拠集めを手伝っていたが、現場で筧に脅され、青田の法案を守るため真実を隠していた。さらに東京地検の検事・太田(笠松将)は、贈収賄摘発のために青田の死を利用し、首吊り遺体への偽装工作まで行っていたことが判明する。怒りをあらわにする麻帆に対し、太田は目的のためなら手段を選ばない姿勢を崩さない。事件は解決したものの、筧は不起訴となる。しかし青田が残した医療改革法案は若手議員へ引き継がれた。亡き政治家の理想は完全には消えず、未来へ託されたのである。

見どころ

○涼音が向き合った姉妹の距離
 これまで冷静沈着だった涼音の内面が深く描かれる。姉の早紀を嫌いだと言いながらも、その人柄だけは信じ続ける姿が印象的だった。事件を追う過程で、空気を読んで生きてきた姉と、自分の信念を貫こうとする妹の対比が鮮明になる。終盤、互いに本音をぶつけ合う場面では、姉妹が初めて対等な関係として向き合ったように見えた。法医学ミステリーでありながら、家族ドラマとしても高い完成度を持つエピソードだった

○ボールペンが語る法医学の妙
 胸の刺し傷が殺傷行為ではなく救命措置の痕跡だったという真相は、第6話の法医学パートを象徴する展開である。何気ない傷が、実は命を救おうとした証だったという逆転の発想が見事だった。転落死、首吊り偽装、不倫疑惑と複雑に絡み合う情報を、一つひとつ科学的に整理していく真澄の推理も見応え十分である。単なる犯人探しではなく、故人が最後に何を経験したのかを読み解く本作らしさが強く表れていた。

正義のための偽装という難題
 検事の太田が登場したことで、物語は単純な善悪では語れない領域へ踏み込んだ。巨大な不正を暴くために死体偽装まで行った太田の行動は違法である。しかし彼の目的そのものには一定の正当性も感じられる。だからこそ、亡くなった人の尊厳を守るべきだと訴える麻帆の言葉が重く響いた。正義とは何か、真実を明らかにする意味とは何かを視聴者に問いかける。

感想

 政治に家族、そして法医学が入り混じった回だった。事件の鍵を握っていたのは胸の刺し傷。命を奪った痕跡かと思いきや、実は命を救おうとした証だった。

 法医学が人の内面や想いまでをも描き出すものであることを再認識させられた。

 また、贈収賄事件や検事による偽装工作など、政治的な背景を絡めたストーリーも印象深かった。

 そして、今回メインとして描かれたのは涼音。空気を読むことを優先してきた早紀と、自分の信念を曲げたくない涼音という姉妹の対比は鮮やかだった。

 ラストで筧は収賄の罪に問われるものの、秘書に押しつけて不起訴となり後味の悪さを残した。現実社会の理不尽さを映していて、なんとも言えない気持ちになった。

 しかし、青田の法案が受け継がれたことは救いとなった。爽快感はなかったが、人が遺した志の重みを味わわせる終わらせ方はこのドラマらしい。