LOVED ONE⑤

REVIEW

第5話 子どもが見た“かいぶつ”

キャスト

水沢真澄 … ディーン・フジオカ
桐生麻帆 … 瀧内公美
本田雅人 … 八木勇征
高森蓮介 … 綱啓永
松原涼音 … 安斉星来
吉本由季子 … 川床明日香
篠塚拓実 … 草川拓弥
井川 薫 … 上川拓郎
山崎慎也 … 小松和重
堂島穂乃果 … 山口紗弥加

あらすじ

○高森が抱える見えない恐怖
 法医学者・高森蓮介(綱啓永)は、まもなく父親になることをMEJの仲間たちに報告し、祝福を受ける。しかしその裏で、高森は言葉にできない不安を抱えていた。そんな中、10歳の少年・戸川奏太(長尾翼)が重傷を負った状態で発見される。全身に残る痣や傷から虐待の可能性が浮上し、高森は臨床法医学の専門家として調査を担当することになる。子どもの身体に残された痕跡と向き合ううちに、高森の内側に封じ込められていた自身の過去も静かに揺さぶられていく。

黒い怪物の正体
 奏太は搬送時、「黒い怪物が来ちゃう」とうわ言を残していた。母・沙也(小野ゆり子)は傷の原因について曖昧な説明しかせず、周囲の住民からは悲鳴や暴れる声の証言が集まる。さらに交際相手・紀田諒司(前田公輝)の存在が浮上し、警察は虐待犯として彼を疑う。しかし奏太の腕に残る傷痕は、虐待による無秩序なものではなく、異様な規則性を持っていた。高森は、その傷に単純な暴力とは異なる意味が隠されていることに気づき始める。

虐待の記憶と連鎖
 紀田が自首し、「軽く押したら転落した」と供述したことで事件は決着しかける。しかしその話を聞いた高森は過呼吸を起こし倒れてしまう。高森自身も幼少期に義父から虐待を受けていたのだ。彼は麻帆に、自分も将来子どもへ暴力を向けてしまうのではないかと恐れていると打ち明ける。虐待は被害者の人生を長く拘束し続けるという現実が、高森自身の傷として描かれる。事件を追うことが、そのまま自分自身と向き合う行為になっていく。

○真犯人は誰か
 真澄からの助言を受けた高森は、奏太の傷痕やMRI画像を再検証する。その結果、虐待の痕跡は現在の交際相手ではなく、実父・上条亘(長田成哉)と暮らしていた時期についたものだと判明する。奏太は絵本に登場する黒い怪物を上条と重ね合わせ、恐怖から自傷行為を繰り返していたのだった。さらに事件当日、奏太は母を守ろうとしてナイフを持ち出し、追いかけた末に自ら転落していた。大人たちの暴力と恐怖が、子どもの精神を静かに追い詰めていたのである。

○断ち切るという決意
 上条は、奏太を守ろうとした紀田に罪を被るよう強要していた。しかし真相が明らかになり、上条は逮捕される。紀田は釈放され、沙也と奏太のもとへ戻る。高森は、虐待を受けた過去を抱えながらも「自分は同じことを繰り返さない」と決意する。事件を通して、高森は被害者としてではなく、未来を変える側へ踏み出していく。そしてラストでは、真澄が「任せてよかった」と高森を認める。新たな命の誕生を前に、高森はようやく父になる覚悟を手にする。

見どころ

○法医学と心の傷の接続
 外傷だけでなく心理的外傷まで法医学的視点で描いている点が特徴的である。奏太のMRI画像に現れた脳の萎縮や、自傷痕の規則性が、単なる暴力の証拠ではなく恐怖の記憶として扱われる。身体の痕跡から精神状態へ迫っていく構成が、従来の事件解決型ドラマとは異なる深みを生んでいる。

○高森という人物の掘り下げ
 これまで比較的明るい立場にいた高森の過去が明かされることで、キャラクター像が大きく変化する。虐待を受けた経験があるからこそ、奏太の苦しみを理解できる一方、自分も加害者になるのではないかという恐怖を抱えている。その矛盾した感情が非常に人間的であり、本話に強い説得力を与えている。

○怪物は誰だったのか
 黒い怪物という言葉はミステリー的なフックとして機能しながら、最終的には虐待によって形成された恐怖の象徴として回収される。怪物は空想ではなく、父親の暴力であり、恐怖を植え付けた環境そのものだった。この構図によって、虐待が子どもの認知や人格形成にどれほど深い傷を残すのかが強く印象づけられている。

感想

 虐待にありがちな毒親を裁いて終わりという単純な話にはせず、連鎖という問題に踏み込んでいる点が印象的だった。

 高森が「自分も父親になったら暴力を振るうのではないか」と怯える姿は非常に生々しかった。加害者を異常者として突き放すのではなく、誰しもが抱えうる「当事者としての恐怖」として描いていた。

 だからこそ、ラストで「あなたのような親にはならない」という高森の決別のセリフには、非常に強いメッセージ性と重みがあった。

 また、黒い怪物というイメージの使い方も巧みだ。子どもにとって暴力は現実以上に恐ろしく、怪物のように記憶へ刻み込まれる。それが自傷行為へ結びついていた真相は痛々しく、後味が悪い。

 一方で、紀田が本当は奏太を守ろうとしていたことや、最後に三人が再出発しようとする姿にはせめてもの救いだった。