全領域異常解決室⑩

REVIEW

第10話 その答えは、神のみぞ知る―悠久の時を超えた絆

キャスト

興玉雅 … 藤原竜也
雨野小夢 … 広瀬アリス
直毘吉道 … 柿澤勇人
豊玉妃花 … 福本莉子
北野天馬 … 小宮璃央
二宮のの子 … 成海璃子
芹田正彦 … 迫田孝也
荒波健吾 … ユースケ・サンタマリア
宇喜之民生 … 小日向文世

【第10話ゲスト】
日野克己 … 溝端淳平
大和田光男 … 真壁刀義
佐野昭雄 … 岡安泰樹
男性 … たんぽぽおさむ
三上 … 山根理輝
寿正 … 野間口徹 

あらすじ

○選別が始まった東京
 興玉雅(藤原竜也)たち「全領域異常解決室」は、ヒルコによる選別が現実のものとなった事態に直面する。寿正(野間口徹)が開発したSNSを見続けた人々が次々と命を絶ち、街は混乱と恐怖に包まれていた。政府は「全決」が事件に深く関与していると断定し、強制捜査に踏み切る。一方で、荒波健吾(ユースケ・サンタマリア)ら警察も必死に捜査を進めるが、被害は拡大するばかりである。これまで怪異として扱われてきた出来事が、国家規模の危機へと変貌していく展開は圧迫感が強く、物語が最終局面へ突入したことを強烈に印象づける。人間社会の脆さと、情報そのものが凶器になる恐怖が静かに描かれていた。

○寿と新しい神々の計画
 寿に拘束された興玉、豊玉妃花(福本莉子)、芹田正彦(迫田孝也)は、そこでヒルコ計画の全貌を知る。寿は、自分こそが最初にヒルコに選ばれた人間だと語り、テクノロジーを駆使して神々を探し出してきた経緯を明かす。さらに、人魚のミイラから作り出した不老不死のカプセルを使い、新しい神となる人間を選別していた。会場には新世界の到来を信じる人々が集められ、異様な熱気に包まれている。しかし、二宮のの子(成海璃子)がヒルコとして現れた瞬間、事態は急転する。選ばれたはずの人間たちは毒入りカプセルによって命を落とし、寿もまた利用されていたに過ぎないことが露わになる。理想に酔った者たちの末路が、冷酷な形で描かれた場面である。

○直毘吉道こそヒルコ
 興玉は雨野小夢(広瀬アリス)を救うため単身「全決」へ向かい、そこで直毘吉道(柿澤勇人)と対峙する。直毘は呪符を貼られているように見せかけていたが、それは偽装であり、彼こそが本物のヒルコだった。興玉は以前、直毘に犬神の毛を付着させて反応を試しており、不老不死の存在であることを見抜いていた。正体を暴かれた直毘は、自らが役小角であること、人間の傲慢さに絶望し、修理固成によって世界を作り変えようとしていたことを語る。神が人間を守り続けるべきだと考える興玉と、人間を見限った直毘の対立は、この作品が積み重ねてきたテーマを真正面からぶつけ合うものだった。

○小夢が守った秘密
 直毘は4カ月前の真実を語り始める。刀田楓真(ジャン・裕一)に誘い出された小夢は、直毘から天石戸別神の正体を聞き出されそうになっていた。しかし小夢は、興玉を守るため、自らの意思で事戸渡しを行い、神としての記憶を捨てたのだった。その献身を知った興玉は強く動揺する。さらに直毘は興玉に呪符を貼り、記憶を奪おうとするが、拘束された小夢が呼び出しの鈴を鳴らしたことで状況が変わる。鈴の音を聞いた興玉は、小夢との時間を思い出し、呪符の支配に抗う。記憶を失ってなお誰かを守ろうとする小夢の姿と、それに応える興玉の執念が重なり、終盤最大の感情の山場となった。

○別れと、それでも残るもの
 激闘の末、直毘は敗北し、人間の司法で裁かれることになる。一連の事件は寿らカルト集団による犯行として処理され、神々の存在を知った人間たちは事戸渡しによって記憶を消されることになった。「全決」の日常も静かに戻り、宇喜之民生(小日向文世)が焼いたピザを囲む光景が再び描かれる。しかし、小夢は神に戻れなかったため、「全決」の仲間たちとの記憶を消されなければならなかった。別れを前に笑顔を見せる小夢と、言葉を失う仲間たち。その後、興玉が事戸渡しを行うが、指先がわずかに動いたようにも映る。そして翌日、街ですれ違う2人。小夢は呼び出しの鈴を取り出す。完全な喪失ではなく、微かな繋がりが残されている余韻が印象的なラストだった。

見どころ

○直毘=ヒルコ判明の衝撃
 最大の見どころは、直毘がヒルコだったという真相の開示である。これまで冷静な官僚として振る舞い、「全決」と一定の距離を保ちながらも協力者のように見えていた直毘が、実は全てを裏から操っていた存在だったという反転は鮮烈だった。しかも彼は単なる悪役ではなく、人間社会への失望を抱えた不老不死の呪術者として描かれる。科学と欲望によって暴走する現代を見続けてきたからこそ、人間を見限ったという思想には一定の説得力もある。善悪を単純化せず、神と人間の距離感を問い続けた本作らしい敵役だった。興玉との対話は思想対決としても密度が高く、シリーズ全体を支えていたテーマが凝縮されていた。

○興玉と小夢の関係の決着
 小夢が自ら事戸渡しを選んでいたという真実は、これまで積み重ねられてきた2人の関係を決定づける重要な場面だった。小夢は神としての記憶も、自分自身の存在意義も失う危険を理解しながら、興玉を守ることを優先したのである。そして終盤、鈴の音をきっかけに興玉が再び立ち上がる流れは、理屈ではなく感情で繋がっている2人の関係を象徴していた。派手な恋愛描写を避けながら、それでも互いを特別に思っていることが伝わる演出が巧みである。最後のすれ違いの場面も含め、完全なハッピーエンドにしないことで、むしろ余韻の深さが際立っていた。

○神話と現代社会の融合
 本作全体を通じた魅力でもあるが、最終話では特に“神話を現代の問題へ接続する巧さ”が際立っていた。SNSによる集団自殺、情報汚染、選民思想、カルト化したコミュニティなど、現代的な不安を題材にしながら、その裏に神々の戦いを重ねている。寿がテクノロジーによって神を管理しようとした構図は、人間が理解できないものをデータ化し支配しようとする現代社会そのものにも見える。一方で、興玉たちは不完全な人間を見捨てず守ろうとする。古代神話の存在を使いながら、現代人の倫理観や孤独、暴力性を描いた点がこの作品の独自性であり、最終話はその集大成だった。

感想

 最終回にてやっとヒルコの正体が明らかになったが、なかなか長かった。途中、ヒルコの正体をミスリードさせるべく、仕掛けがあったため惑わされた。ただ正体が明らかになってみれば、全決、警察、テミスホールディングスとも接点があり、この直毘しかありえなかった。

 そして八百比丘尼や役小角が途中で出てきたが、気にせず見ていたためこれがヒルコの正体につながっていたとは思いもしなかった。

 少し残念だったのは、ヒルコと神々との直接の対決というと小夢や興玉はあったが、双方の特殊能力を使った派手な対決場面が見たかった。

 対決場面といえば全決の東京と京都が臨戦体制で対峙、その後、やり合ったであろうが実際にその場面が描かれなかった。こちらもぜひ見たかった。

 気になったのは、やはり二宮。自分の中では二宮がヒルコかもと思っていたが、ベットに葦で編んだ舟が残されていたというのは何を物語っているのだろう?もしかして本当のヒルコなのかもしれない。

 後は興玉は小夢に全決メンバーの記憶を消すために事戸渡しは本当にしたのだろうか?その時の指の様子、さらに街で興玉とすれ違った後、小夢は呼び出しの鈴を取り出した描写。

 なんとなく、これで終わりではなく、この後、続きが描かれるような気がしてならない。