全領域異常解決室⑨

REVIEW

第9話 最重要神、命の危機!救世主は荒ぶる神スサノオ

キャスト

興玉雅 … 藤原竜也
雨野小夢 … 広瀬アリス
直毘吉道 … 柿澤勇人
豊玉妃花 … 福本莉子
北野天馬 … 小宮璃央
二宮のの子 … 成海璃子
芹田正彦 … 迫田孝也
荒波健吾 … ユースケ・サンタマリア
宇喜之民生 … 小日向文世

【第9話ゲスト】
古戸沼人志 … 草野イニ
佐野速雄 … 岩川晴
佐野昭雄 … 岡安泰樹
寿正 … 野間口徹  

あらすじ

○天石戸別神を狙うヒルコ
 興玉雅(藤原竜也)は、佃未世(石田ひかり)の通信履歴から、自分が天石戸別神である情報が何者かへ送られていた事実を知る。そんななか、「全領域異常解決室」で宇喜之民生(小日向文世)と向き合っていた興玉は、宇喜之がヒルコに乗っ取られていることを見抜く。だが抵抗もむなしく、興玉は神器・天之加久矢で刺されてしまう。小夢がかつて負傷した時と同じ傷は神の治癒を拒み、興玉は急速に衰弱していく。これまで飄々としていた彼が、死を目前にしてなお冷静に状況を整理する姿に、神としての孤独と覚悟が滲む回である。

○傷ついた神と虐待される子ども
 雨野小夢(広瀬アリス)は、芹田正彦(迫田孝也)とともに建速須佐之男命を探しに向かう。現在その神は、佐野速雄(岩川晴)という少年として暮らしていた。しかし速雄は父親から凄惨な虐待を受けており、その小さな身体には無数の傷が残されていた。小夢は「人間のせいでごめんなさい」と涙ながらに謝り、興玉を救ってほしいと懇願する。速雄の力で興玉は一命を取りとめるが、神である速雄自身は制度にも社会にも守られていなかった。神話の存在を描きながら、現実社会の児童虐待問題を突きつける構成が重く胸に残る。

○寿正と修理固成
 寿正(野間口徹)は、修理固成という言葉を掲げ、人類と神の再編を企てていた。彼が起動した謎のアプリをきっかけに、SNS上では異常現象が拡大。スマートフォンを見つめた人々が突如命を落とす事件が各地で起き始める。一方、興玉たちは寿こそヒルコではないかと疑い、正体を暴くため動き出す。古戸沼人志(草野イニ)の変身能力を使い、直毘吉道(柿澤勇人)になりすまして情報収集を行うなど、「全決」は危険な賭けに出る。世界そのものが崩れ始める気配の中で、神々の戦いは静かに加速していく。

○荒波が見た神の力
 荒波健吾(ユースケ・サンタマリア)は、これまで「全決」の話を半信半疑で受け止めていた。しかし興玉に呼び出され、豊玉妃花(福本莉子)の能力を目の当たりにしたことで、超常の存在を否応なく認めざるを得なくなる。さらに興玉は、かつて「全決」に出入りしていた大月比呂佳(田山由起)と荒波の過去について語り、彼の心を揺さぶる。荒波はなおも葛藤を抱えながら去っていくが、この場面によって彼が単なる刑事ではなく、神と人間の狭間に立たされる存在になったことが明確になる。シリーズ全体の立ち位置が変化する重要な回でもある。

○二宮の裏切りと崩壊の始まり
 興玉は寿の元へ乗り込み、彼がヒルコかどうかを直接確かめようとする。しかし寿は用意周到だった。豊玉は両腕を折られ、芹田も捕らえられ、興玉までもがスタンガンで意識を奪われてしまう。その裏で、「全決」に残っていた村主虎飛矢(名村辰)はヒルコに乗っ取られていた。さらに終盤、二宮のの子(成海璃子)が小夢を抱き締め、「新しい神になる資格がある」と囁きながら呪符を貼りつける。味方だと思われていた人物の裏切りと、街中で始まるSNS死事件。物語は一気に破滅へ傾き、最終局面の入口へ突入する。

見どころ

○興玉の弱さと覚悟
 これまで絶対的な存在に見えていた興玉が初めて本格的に追い詰められる。天之加久矢による傷は致命的で、普段の余裕は明らかに失われていく。それでも彼は仲間を守るため、寿の元へ向かう決断を変えない。さらに、事戸を渡される前に毒で自決する覚悟まで口にする。世界を守るためなら、自分の命さえ計算に入れる姿勢は壮絶である。藤原竜也の演技も、激情より静かな覚悟を前面に出しており、これまでとは異なる重みがあった。ヒーローが無敵ではないと示したことで、終盤の緊張感が一気に高まった。

○児童虐待と神話の対比
 佐野速雄のエピソードは第9話の特に苦しい場面だった。人を救う力を持つ神でありながら、自分自身は虐待から逃れられない。その矛盾があまりにも痛々しい。小夢が涙を流して謝る場面には、神も人間社会の歪みの前では無力なのだという感覚があった。行政に保護されても親元へ戻される描写も現実的で、ファンタジーの枠を超えた社会性を帯びている。ただ怪異を描くだけではなく、人間社会の欠陥を神の視点から映し出している点が、この作品の大きな強みだと改めて感じさせられた。

○二宮のの子の豹変
 終盤で最も衝撃的だったのは、二宮のの子の変貌である。これまで冷静な刑事として振る舞ってきた彼女が、「新しい神々が必要だ」と語り、小夢に呪符を貼る姿は不気味だった。しかも彼女の言葉には狂気だけでなく、現代社会への失望も滲んでいる。SNSによって人が簡単に壊れていく状況を見続けた結果、人類そのものを選別すべきだという思想へ傾いたのだろう。成海璃子の抑えた演技が、余計に恐怖を増幅させていた。物語終盤に向け、敵と味方の境界が崩れていく感覚が鮮烈だった。

感想

 前回最後の場面、宇喜之と寿の会話から、どこかで興玉を狙ってくるだろうし、もしかしてそれは今回のメインかもと思っていた。その場面は第9話の早い時間帯で宇喜之は興玉に牙を向いてきた。

 正直意外と早いと思ったし、実は前々から興玉にはやっかみみたいなものがあって、スキを狙っているところにヒルコが現れて懐柔させられて敵対側になったのではないか考えていた。

 しかし、宇喜之はヒルコに乗っ取られただけで、2人の間に何かあるわけではないようだった。それにしても、宇喜之はどこで呪符を貼られて乗っ取られてのだろうか?

 そういえば5人目の被害者となった刀田も後ろ姿が写った時に呪符みたいなものが見えていた。小夢を誘い出した時はヒルコに乗っ取られていたのがこれで確定したといっていいだろう。

 さらに興玉が刺した道具は小夢の時と同じ神器・天之加久矢。あの時には現場にはなかったようだが、まったく同じものなのだろうか。神器っていうぐらいだから、こちらにあればもう他の神がこれで刺されることはない?

 瀕死状態の興玉だが、天石戸別神が生き残るためには魂を生まれ変わらせるがてっとり早いが、ヒルコは興玉が死ねば小夢を殺すと脅してきた。

 神でなくなった小夢を見殺さないのは彼女にはまだ何か秘密があるのか、それとも神は人間を守るためだからなのか。それにしても天宇受売命の魂って現状はどういう状態なのだろうか?

 興玉を救うために今回出てきたのは建速須佐之男命。ツクヨミと並んで色々なゲーム等でも登場するので割ると名が知られていると思う、スサノオ。

 イメージと違って少し違和感があったが、やはり魂が生まれ変わってそんな年数が経ってない子どもだからか。

 そしてもう1人、別の人間に変身する能力を持つ一言主神も登場。直毘に化けて寿の情報を得ようとする。神なのにオドオドして気が小さそうで大丈夫か?と思っていたが案の定、荒波にバレて失敗。でも、いつもと違ってオドオドしている直毘、なんか微笑ましい。

 最終的に興玉は寿に直接会ってヒルコかどうかを確かめることに。少人数でも神で能力を持っているから大人数でも大丈夫。でも最後には卑怯な手…人質とかで手が出せない状態で立場がが逆転して大ピンチってのが普通の展開だよね?けっこう最初から攻撃受けてるし、しまいにはスタンガンでやられてしまうし。そもそも神に対して殴ったりして罰当たりだなという気もするのだが…。

 ここで終わらないのがこのドラマ。小夢は二宮から速雄(建速須佐之男命)が父親から暴行を受け、意識不明の重体で病院へ搬送されたことを聞く。二宮は「愚かな人間たちを選別して新たな世界を作らなければならない」と話し小夢を抱き締めて首筋に呪符を貼りつける。

 ここまでそれほど目立たなかった二宮だが、ヒルコ側の人間?それとも乗っ取られているだけなのか。

 それにしても月読命のSNSでの娘の自殺、今回の建速須佐之男命に対する児童虐待と「愚かな人間たち」を見せつけられるとヒルコが目指していることがわからなくもないという気になってくる。

 悪だったヒルコの立ち位置が少しずつ変わってきているような気がする。それでも興玉たちはきっと最後まで人間を守ろうとするのだろうが…。